お盆は、あの世(浄土)から帰ってくる故人や祖先を祀る年中行事です。
地域差はあるものの、一般的には8月13日から16日までがお盆とされています。
その間に、私たちはお墓参りに行ったり仏壇にお供えをして手を合わせて祖先をお迎えします。
そして、お墓参りや仏壇に欠かせないのは仏花ではないでしょうか?
あなたがお墓参りに行くとしたら、どんな花を選びますか?
花屋に行けば、お墓参り用の花がセットされていますよね。
最近ではスーパーマーケットでも手軽に買うことができます。
だから、その数パターンの花束の中から選べばいいのですが筆者は必ず菊がメインのものを選びます。
菊は色が様々で綺麗ですし、何より落ち着いた雰囲気がするからです。
でもそれだけではありません。
菊の花は筆者にとって親しみがある花だったのです。
読んでいただき、菊の花に魅力を感じていただけたら嬉しく思います。
お盆に菊がなぜ選ばれるの?
菊は伝統的に仏花として供えられてきました。
その理由には菊は邪気払い、無病息災、延命長寿の観点からも縁起がいいとされてきたからです。
陽の力をもつ菊の花は死という陰の影響を中和して陰陽のバランスをとる働きもあります。
だから葬儀や法要など仏事に欠かせないものとされるようになりました。
また菊の花は暑さに強く、なかなかしおれない特徴からもお盆に墓や仏壇に供えられることが多いようです。
お墓の花で困ることとして枯れた花が墓地を汚すことが挙げられますが、菊は枯れても花弁が散らばらないそうです。
そんな扱いやすさも選ばれる理由の一つではないでしょうか?
また菊のにおいは、お香のにおいとも似ていて私たちの心を落ち着かせます。
お盆に菊はなぜ?筆者の場合
筆者が物心ついた頃から、秋になると実家の庭にはたくさんの菊が咲いていました。
父が菊作りを趣味としていたからです。
菊花協会にも登録していて菊花展に出品して賞をいただいたりするほどの熱の入れようでした。
秋になると庭には大輪、中輪、様々な形や色の菊の花が咲き乱れて、近所の人たちの楽しみでもありました。
足を止めて我が家の庭を覗き込む人たちに、父は苦労して育てた菊の茎を切って「よかったらどうぞ」と手渡すのです。
父は酒癖が悪くて飲むと暴れたり人に迷惑をかける人でした。
だからそんな父と菊作りをして近所の人を喜ばせる父とが同じ人間だと思うと不思議でした。
気が短くて人間関係がうまく築けない父と難しくて根気がいる菊作りを気長にこなす父の2つの姿が繋がりませんでした。
しかし父が82歳で亡くなった後、父が書きのこしたノートが出てきました。
そこには自分を内観し「弱い心が自分を酒に走らせ、家族にも迷惑をかけてきた」と書いてあったのです。
それを見たとき私の中で、2つの面をもつ父の姿が繋がりました。
繊細ゆえ、優しい気持ちで菊を育てることができ、繊細ゆえ、人との間で傷つきストレスを募らせ酒を飲んで現実逃避をしていたということです。
「丹精込めて」という言葉がありますが、まさに菊作りは本当に難しく根気がいるようです。
だからこそ菊は気品があって奥深い花なのです。
父が亡くなったのは菊が咲き始める秋晴れの日でした。
棺の中には、たくさんの菊の花が父の亡き骸を包み込み、私たちは穏やかな気持ちで父を見送りました。
美しい菊のおかげで父の顔が幸せそうに見えました。
そういうこともあって筆者は菊が好きなのです。
菊にはどんな種類があるの?
皇室の紋章でもある菊は日本の象徴の花でもありますが、菊には和菊と洋菊があります。
中国から日本に伝わったのは奈良時代で、平安時代に観賞用として栽培されたようです。
江戸時代にはヨーロッパやアメリカで発展して、その後、品種改良も進んでいったとされています。
そういう歴史もあり菊の種類は200種とも言われ数えきれないほどあるのです。
たとえばポンポンマムという、名前も見た目もモダンな洋菊があります。
ピンポン玉みたいにまん丸のフォルムでかわいいので心が和みます。
洋菊も和菊とは違う魅力がありますね。
仏事には菊以外でもいいの?
仏事に菊が選ばれる理由を述べてきましたが、菊以外の花でもいいのでしょうか?
答えは「はい」で、菊にこだわる必要はありません。
故人が好きだった花を忘れないでいることは何よりも供養になるでしょう。
また自分の好みで選んだ花も故人は喜んでくれるはずです。
ただ避けたい花がいくつかあります。
・トゲや毒があるもの
・匂いが強いもの
・ツルがあるもの
・花粉が落ちやすいもの
です。
お盆に菊はなぜ?【まとめ】
お盆の花に何を選ぶかは注意点があるものの、人それぞれで正解はないと思います。
リンドウやキキョウ、カーネーションも色が鮮やかで美しいですね。
あなたが故人を偲んで選んだ花は思いが込められているので、世界にひとつだけの花となることでしょう。
お盆には、どんな種類の花を選ぶかより、どんな思いや感謝を故人に伝えたいかが大切なのです。