私たちは正月、決まってお雑煮を食べますが、そのいわれについてきちんと理解されている方は少ないのではないでしょうか。
そもそも、お雑煮とはどういったものか。
食べる習慣はどこから来たのか。
そして、中身の具材はどんな意味をもっているのか。
実は謎の多い食べ物のような気がしてきます。
そこで今回は、正月を起源にした、お雑煮を食べる理由、そしてさまざまに縁起を担いだ具材の意味も一緒に解説していきます。
正月は神様をお迎えするお祭り
お雑煮を、正月に食べる理由を知るうえでは欠かせない、正月のいわれについて少しご紹介します。
正月のそもそもの起源については、はっきりとしたことはわかっていませんが、仏教が伝わる6世紀の半ば以前から行事として、なされていたようです。
日本には、昔からヒトも含め、すべてのものには霊魂が宿っており、人は亡くなると一定の時を経て個人の概念はなくなり、その霊魂は祖霊、すなわちご先祖さまになると信じられていました。
そして、そのご先祖様は私たちに影響を与える存在として、近くにいらっしゃいます。
これを祖霊信仰といい、古くからお盆と正月に、ご先祖様を祀っていました。
そのうちお盆は仏教の行事と結びついて、亡くなった者を供養するための行事になり、正月と区別されたものになったようです。
ご先祖様は、自分たちの身近な自然の中にいて、私たちを見守っています。時に、春の田植えの時期に降りてこられ、秋の収穫を終えると山に帰っていく。
それぞれ、「田の神」「山の神」、ご先祖様は神様としてとらえられていたようです。
そして正月のときには、歳神様となって私たちの住むところに戻ってきて、一年の実りと翌年の豊穣を私たちと一緒に祝うというのが、正月の意味するところです。
お雑煮は実りへの感謝と祈りのしるし
つづいて、お雑煮の起源をさかのぼってみましょう。
お雑煮はもともと、室町時代にはすでに貴族や武士のあいだで食され、縁起の良いものとしてお祝いの時などハレの日に出されていました。
さまざまな具材と餅を、一緒に煮雑ぜた(にまぜた)のが、語源となっています。江戸時代には庶民の間にも広がっていきます。
もともと農耕民族が多くを占めていた日本では、先に紹介した正月に歳神様をお迎えするにあたって、実りのものをお供えしました。
それはその地域でとれた、海のもの、山のもの、そしてお米で作られた餅です。餅はお米からつくられていて、実りのあかしと言えるかもしれません。
収穫の感謝と次の豊作を願ってお供えした餅やそのほかの具材をお下がりとして、お雑煮にして歳神様と一緒にいただきました。
以上がお雑煮の起源と、正月に食べる理由です。
餅は長生き!縁起を担いだ具材
おせちの中の数の子は「子孫繁栄」、黒豆は「健康・元気に働く」といった具材に意味があるように、お雑煮の餅や具材にも一つ一つ意味が込められています。
お雑煮を食べる理由には、縁起を担ぐ食事だったことも、挙げられるのではないでしょうか。
お雑煮に使われる代表的な具材の意味合いをご紹介します。
餅
長く伸びることから、長寿を意味します。
丸餅は円満、角餅は、のした(伸ばした)餅を切ったことから敵をのす、倒すことをあらわします。
里芋
里芋は親芋から子芋、孫芋とどんどん増えていくことから、子孫繁栄の意味をもちます。
また、人の頭をあらわすということで、頭芋を使って、「人々の先頭にたつ」という出世の縁起を担ぐ地域もあります。
大根
角を取ることで、円満をあらわします。
にんじん
地域によって、金時にんじんを使うことがあります。その鮮やかな色は魔除けの意味をもっています。
青菜と鶏肉
関東では小松菜などの青菜と鶏肉を入れるところ多いですが、これは「菜鶏(なとり)」と「名を取る」をかけ、縁起を担いでいます。
地域で特有の具材の意味についてもご紹介します。
小豆
山陰の地域では、ぜんざいのような小豆を使ったお雑煮があります。
小豆は邪気を払う力があるとされています。
鮭
新潟など東日本の地域で使われますが、赤がめでたい色、一度にたくさん卵を産むことから、子宝をあらわします。
ぶり
博多ではぶりが使われますが、ぶりは成長にともなって名前が変わる出世魚で、縁起物として知られています。
正月にお雑煮を食べる理由は?【まとめ】
いかがでしたか。お雑煮を食べる理由を正月とお雑煮の起源、そして具材の意味合いとともに、解説してきました。
今では形式的なものとして、何気なくお雑煮を食べている方も多いと思います。
ですが、昔の人たちがすべてのものには霊が宿ると信じて、食べ物を大切にし、ご先祖さまや自然に感謝した気持ちが、お雑煮には込められているのではないでしょうか。
正月は自然の恵みである食物をいただくという、感謝の心に改めて立ち返る行事として、これからも変わらず大切に続けていきたいものですね!